すべてはあの花のために②


 今日はアカネだけ稽古をつけてもらう日のようで、彼は早速更衣室へと向かった。彼が着替えている間、カナデから「アオイちゃんってやっぱりすごいよね~」と小さくこぼれ落ちる。


「何を言っているんだいカナデくん」

「へ?」

「アカネくんはちゃんと気づいてるよ? じゃないとあんな風には言わないよ」


『おれは言って欲しくなかったかもしれないのにい、そんなことさらっと言ってくれちゃうなんて』


「かもって、くれちゃうって、そう言ってた。だからアカネくんは、そうしてくれて『ありがとう』って言ってるんだよ」


 葵がそう言うと、彼は目を見開く。


「そっか。俺はちゃんと、アカネの手助けができてたんだね」


 心底安堵したようにカナデがそうこぼすと、「あったりまえだあ!」と叫びながらアカネが更衣室から飛び出した。


「もうあおいチャンってば! おれが後で言おうとしてたのにいっ!」

「おう。それはすまないことをした。此奴があまりにも腑抜けておったのでな」

「腑抜け!?」

「そうかそうか! それは助かったわい!」


 嬉しそうにそう言ったアカネは、小さく息を吐く。
 次の瞬間には真剣な表情になっていて、彼はそのまま道場への扉を開いた。


「師匠、遅くなりました」


 扉を開くと、見た目ではまだ“お祖父様”とは呼ばれないであろう若そうな男性が、そこに佇んでいた。


「遅れた分取り戻しなさい。早く稽古を始めなさい」


 祖父にそう言われると、アカネは「おっす!」と早速稽古をはじめた。葵たちはその姿を見学させてもらうことに。