今日はアカネだけ稽古をつけてもらう日のようで、彼は早速更衣室へと向かった。彼が着替えている間、カナデから「アオイちゃんってやっぱりすごいよね~」と小さくこぼれ落ちる。
「何を言っているんだいカナデくん」
「へ?」
「アカネくんはちゃんと気づいてるよ? じゃないとあんな風には言わないよ」
『おれは言って欲しくなかったかもしれないのにい、そんなことさらっと言ってくれちゃうなんて』
「かもって、くれちゃうって、そう言ってた。だからアカネくんは、そうしてくれて『ありがとう』って言ってるんだよ」
葵がそう言うと、彼は目を見開く。
「そっか。俺はちゃんと、アカネの手助けができてたんだね」
心底安堵したようにカナデがそうこぼすと、「あったりまえだあ!」と叫びながらアカネが更衣室から飛び出した。
「もうあおいチャンってば! おれが後で言おうとしてたのにいっ!」
「おう。それはすまないことをした。此奴があまりにも腑抜けておったのでな」
「腑抜け!?」
「そうかそうか! それは助かったわい!」
嬉しそうにそう言ったアカネは、小さく息を吐く。
次の瞬間には真剣な表情になっていて、彼はそのまま道場への扉を開いた。
「師匠、遅くなりました」
扉を開くと、見た目ではまだ“お祖父様”とは呼ばれないであろう若そうな男性が、そこに佇んでいた。
「遅れた分取り戻しなさい。早く稽古を始めなさい」
祖父にそう言われると、アカネは「おっす!」と早速稽古をはじめた。葵たちはその姿を見学させてもらうことに。



