体育館で八つ当たりしたのはもう、誰かさんの噂で聞いてるのかもしれないけど。
おれはもう夢を描けないから。もう、おじいちゃんの敷いたレールの上しか走れないから。あの時、魔法少女にそっくりなあおいチャンを見て、一瞬夢を描いてしまったんだ。
――こんなおれを助けて。
敷かれたレールの上から助け出して。
……もう、そんなこと言っちゃいけないのにね。
だから、そんなおれの夢を聞いてしまったあおいチャンに、八つ当たりしたんだ。
どうしてこの子に言ってしまったんだろう。
もしかしたらこの子も、おじいちゃんに当てられてしまうかも知れない。巻き込んでしまうかも知れないのに……って。
でも、そんなおれにもあおいチャンは『八つ当たりしてくれたんだね』って言ってくれた。おれの『はけ口になる』って言ってくれた。
だからおれは、あおいチャンにはちゃんと知っておいてもらいたかったんだ。事情を知ってるかなチャンにも、心配かけちゃったみたいだし。
だから今日は、二人におれの描かれなかった夢を話したかった。夢を描けない代わりに、たくさんの絵におれの、有りっ丈の思いを込めたこと。ここから飛び出したいんだってこと。
それはもう不可能なことなんだけど、足掻いてしまう自分に呆れてしまうけど。それでも、もう少しだけ。叶わない夢を、おれは少しでも長く……描きたいから。



