すべてはあの花のために②


 体育館で八つ当たりしたのはもう、誰かさんの噂で聞いてるのかもしれないけど。
 おれはもう夢を描けないから。もう、おじいちゃんの敷いたレールの上しか走れないから。あの時、魔法少女にそっくりなあおいチャンを見て、一瞬夢を描いてしまったんだ。


 ――こんなおれを助けて。
 敷かれたレールの上から助け出して。

 ……もう、そんなこと言っちゃいけないのにね。
 だから、そんなおれの夢を聞いてしまったあおいチャンに、八つ当たりしたんだ。


 どうしてこの子に言ってしまったんだろう。
 もしかしたらこの子も、おじいちゃんに当てられてしまうかも知れない。巻き込んでしまうかも知れないのに……って。


 でも、そんなおれにもあおいチャンは『八つ当たりしてくれたんだね』って言ってくれた。おれの『はけ口になる』って言ってくれた。
 だからおれは、あおいチャンにはちゃんと知っておいてもらいたかったんだ。事情を知ってるかなチャンにも、心配かけちゃったみたいだし。


 だから今日は、二人におれの描かれなかった夢を話したかった。夢を描けない代わりに、たくさんの絵におれの、有りっ丈の思いを込めたこと。ここから飛び出したいんだってこと。
 それはもう不可能なことなんだけど、足掻いてしまう自分に呆れてしまうけど。それでも、もう少しだけ。叶わない夢を、おれは少しでも長く……描きたいから。