父さんのところへ逃げてるのがバレたみたいで、おじいちゃんは父さんが描いてきた絵を壊したり、父さんに怪我をさせたりしてきたんだ。
だからおれはおじいちゃんにお願いした。
ちゃんと稽古に出るから。
ちゃんと強くなるから。
ちゃんと道場を継ぐから。
だから、おれ以外の人に強く当たらないで。
そう、お願いしたんだ。
それからおれはちゃんと稽古にも出たし、強くなった。おじいちゃんの願い通りに生きてきた。
……でも、おれの心は限界だった。おじいちゃんの敷いたレールの上は、とっても冷たかったから。 そんな時だった。限界だったおれに、一つの光が差し込んだのは。
もう何となく気づいてると思うけど。おれが『彼女』と会ったのは中学に上がった頃。テレビの中で、何でも願いを叶えてくれる『魔法少女』に出会ったんだ。
おれは、彼女の存在で救われた。
現実世界から、ほんの少しだけ逃げられたんだ。夢を……――描いていられた。
それも、現実の世界から逃げる手段だったから、そんなおれも、おじいちゃんは許さなかった。
……高校をね? 卒業したら、すぐに道場を継ぐように言われたんだ。だから、おれにはもう時間がなくて。それでも、やっぱり好きなことがしたかった。絵を、描いていたかったんだ。
だから、おれを表現できる体育祭のスローガンに、渾身の力を込めた。……あおいチャンがこえをかけてくれた時、門でね、待ってたんだよ。おじいちゃんが来てくれるのを。
おれの作品を見たら少しはちゃんと、おれのこと見てくれるんじゃないかって思って。だから、おれはあの時必死で絵を描いてたんだ。



