「さて! もうすぐ夕ご飯だからね。そろそろみんなのところへ――」
「葵」
そう言って立ち上がろうとした葵の腕をとったアキラは、そのまま自分の方へと引き寄せて、強く抱き締めた。葵に……誰かに、縋るように。
「アキラ、くん……?」
「ごめん。どう言っていいかわからなくて」
不安げな声は、少しだけ震えていた。
「……苦しい?」
「ううん」
「じゃあ寂しい?」
「ううん」
「もしかして……怖い?」
「…………」
「(怖い、のか)」
何が、君をそうさせてるのか。
「……わたしじゃ、力になれないかな」
「ううん。こうしてもらえるだけで、十分」
「そっか」
何もできない葵は、ご飯の時間になるまでずっと、アキラの背中を摩り続けて……あげようとした、だけだったのに。
「おーいアキー? そろそろ飯――」
おう、何というタイミング。
「あ、……ああ。っ、アキが襲われてるうー!」
「違うから!」
「ふはっ」
「ち、ちょっと! アキラくんも否定してよ!」
その後、チカゼの悲鳴を聞きつけたキクとトーマ以外のみんなが大集合。パーティー会場で抱き合ってるところを、バッチリ見られてしまった。
行動が早かったカナデとアカネの二人によってすぐに引き剥がされたけれど、きっと誰かから聞いたのだろう。
「ねえ、何でそういうことになったの。ねえ」
「な、何でと言われましても……」
夕食の間ずっと、トーマに尋問され続けた葵だった。



