すべてはあの花のために②


「どおぞー。ゆっくり寛いでね~」


 彼が案内してくれたのは、家から町全体が見渡せるようなアトリエ。


「うわー。すごい綺麗な景色……!」

「だろー? これにはこだわったんだー」


 話し方もそっくりだ。


「自己紹介がまだでした。わたしは『あおい』と言います」


 挨拶しながら茶菓子を渡すと、一瞬彼は驚いたように目を見開く。


「これはこれは。ご丁寧にありがとうあおいサン。おれの名前は(ちがや)って言います。どうぞ気軽にちーチャンって呼んでね?」

「そ、それは難しいので、チガヤさんと呼ばせてください」

「そっかあ」


 すごく残念がられてしまったけれど、流石に葵にはハードルが高かった。


「あおいチャン。この人はおれのお父さん。って言わなくても何となくわかったかなあ?」

「うん。雰囲気が一緒だったから」


 そう言うと二人は目をパチパチしながら「雰囲気?」と目を合わせている。……なんだ。その可愛い動きは!
 頑張って涎を垂らさないようにしていると、「えらいえらい~」とカナデが撫でてきたので睨んでおいた。その様子に、チガヤが「二人は付き合ってるの?」なんて聞いてくるから、慌てて「違います!」と全力否定。
 その突っ込みに、アカネだけではなくカナデも加わっていたのは、ちょっと意外だった。