すべてはあの花のために②


 そして彼はもう一度尋ねた。「それで、俺がどうしたって?」と、微かに焦った様子で。でも、どう言っていいかわからず、葵は言葉を探した。


「……言えないことか」

「そ、そうじゃないんだけど。……アキラくん自分で気づいてないみたいだから、どうしようかと思って」

「気づいてないなら逆に教えてくれ。みんなにも心配はかけたくない」

「みんなに心配かけたくないのはわかるんだけど、時には頼って。友達なんだから」

「ああ、大丈夫だ。それで? 俺はどこがおかしかったんだ」


 彼は、確実に焦っていた。
 おかしくなっていたと、はっきり口にしたから。


「……最近、ぼうっとすることが多くなったよ。時間も間違えたり、寝過ぎてたり……した」

「他にもあるんじゃないのか」

「ううん。これは違うことだからいいんだよ。……アキラくんは、直せそう?」


 彼は、おかしくなってしまった原因が、はっきりとわかっているようだった。けれど返ってくるのは、僅かに首を振りながら「どうだろうな」と曖昧な否定だけ。


「わたしじゃ、アキラくんの力にはなれないのかな」

「お前は十分、俺の力になってくれてる」

「ううん。だってアキラくん、それを止めようとしないんだもん。そうなってても。でしょう?」


 彼から、それに対する返答はなかった。


「わたしは、アキラくんのことがすっごく心配。だから、先に言っておくね」

「うん?」

「これ以上酷くなるようなら、アキラくんが今そうなっているものを止めるから。……アキラくんを」


 ――――わたしは、止めるよ。


「……心強いな」


 僅かに目を見開いた彼は、安堵したようにふっと表情を緩めていた。