そして彼はもう一度尋ねた。「それで、俺がどうしたって?」と、微かに焦った様子で。でも、どう言っていいかわからず、葵は言葉を探した。
「……言えないことか」
「そ、そうじゃないんだけど。……アキラくん自分で気づいてないみたいだから、どうしようかと思って」
「気づいてないなら逆に教えてくれ。みんなにも心配はかけたくない」
「みんなに心配かけたくないのはわかるんだけど、時には頼って。友達なんだから」
「ああ、大丈夫だ。それで? 俺はどこがおかしかったんだ」
彼は、確実に焦っていた。
おかしくなっていたと、はっきり口にしたから。
「……最近、ぼうっとすることが多くなったよ。時間も間違えたり、寝過ぎてたり……した」
「他にもあるんじゃないのか」
「ううん。これは違うことだからいいんだよ。……アキラくんは、直せそう?」
彼は、おかしくなってしまった原因が、はっきりとわかっているようだった。けれど返ってくるのは、僅かに首を振りながら「どうだろうな」と曖昧な否定だけ。
「わたしじゃ、アキラくんの力にはなれないのかな」
「お前は十分、俺の力になってくれてる」
「ううん。だってアキラくん、それを止めようとしないんだもん。そうなってても。でしょう?」
彼から、それに対する返答はなかった。
「わたしは、アキラくんのことがすっごく心配。だから、先に言っておくね」
「うん?」
「これ以上酷くなるようなら、アキラくんが今そうなっているものを止めるから。……アキラくんを」
――――わたしは、止めるよ。
「……心強いな」
僅かに目を見開いた彼は、安堵したようにふっと表情を緩めていた。



