そう伝えてくる彼に、葵はただ「そうですか」とだけ告げた。だから、彼は察したのだろう。
「お嬢ちゃんは、一体何を知ってるんだ」
「申し訳ありません。それは言えないんです。でも、この件に関してはわたしたちに任せていただきたい」
「これは警察が問題にするような件だ」
「いいえ。きっと警察は動いてはくれないでしょう」
「……だから、お嬢ちゃんにこの一件を預けろって?」
「大丈夫です。うちには理事長がバックについていますから」
そう言うと、彼は何故か呆気にとられた。
「なんだ。ミノルが一枚噛んでんだな」
「ご存じなんですか?」
「ちょっとした知り合いでな」
行事ごとにわざわざ業者を入れるなんて……と思っていたが、まさか理事長とこの人が繋がっていたとは。
ヒエンも「それなら安心か」と、信頼関係がしっかり築かれているようで、葵にも名刺を渡してくれた。
「何かあったら連絡してこい。俺もわかったことがあれば連絡してやる」
「あ、ありがとうございます!」
深々と頭を下げると、頭の上にぽんっと手を置かれ、その大きな手の平に何故か引っ張り起こされる。
「女が知らない男にほいほい頭下げるな。女が頭を下げるのは嫁にもらわれる時、自分の両親にするもんだ。感謝を込めてな。それ以外は下げるこたあねえ。堂々としてろ」
「は、はい!!」



