すべてはあの花のために②


 どこか混乱している様子の彼にこの状況の説明を頼まれ、逆にどこから覚えているかを尋ねたら……。


「え。ぜ、全然……?」

「何となくしか。熱海に着いて、駅で杜真に会って……」

「(ちょっと待って。そこから?)」

「……旅館に、ちゃんと着いたかも危うい」

「でも着いて、キク先生のパーティーの準備しようって」

「パーティー?」

「そうだよ。新幹線の中でキサちゃんが提案してきたでしょう?」


 寝起きだから記憶が混濁しているという可能性も、全くないわけではない。
 少し、辛抱強く待ってあげると、彼は理解が追いついたように「ああ」とこぼした。


「思い出した?」

「みんなで分かれて、ここで部屋の飾り付けをしてるんだったな」

「そうだよ。それで、準備してる間にアキラくん寝ちゃったから、お布団敷いて寝かせてあげてたの」

「葵は? どうして観光行ってないんだ」

「……ちょっと、アキラくんが心配だったからかな」

「心配? 俺がどうかしたのか」

「その前にさ、キク先生のプレゼント買いに行けなかったから、パーティーまでに一緒に買いに行こうね?」

「ああ。悪かった」

「ううん。大丈夫だよ」