「どうしたの。何かあったの」
離れる前に一度司会から帰ってきたヒナタが顔を出す。オウリの言った通り、怒られなかったので拍子抜けした。
「うん。ちょっとね」
「オレには言えないこと?」
眉間に皺を寄せて、ほんの少し寂しそう。美少年がこんな顔をしたら、大好物の女性に襲い掛かられるだろうに。
「ううん。後でちゃんと言うよ」
「……本当だよね」
「うん。ヒナタくんごめんね」
「は? どういう意味?」
苦笑しながら、葵は答えた。
「君が大正解だったという意味です」
「――! ……ッ」
「後でちゃんと話して」と、一言そう言い残して、彼は入場門へと急いでいった。
その後が怖いんだけどなあと思っていると、ついにツバサの出番がやってくる。どうやら彼は一番後ろで引っ張るらしい。
始まるや否や、ツバサは腰の位置を落とし、後ろへ重心を倒す。まるで綱引き選手権でも見ているようだった。
「アンタ、どこ行ってたのよ」
競技を終えたツバサが帰ってきてすぐに、葵はその細腕を掴んで筋肉量を確かめる。
「こんな細い腕の、どこにそんな力があるの……」
「ちょっと。久し振りのまともな会話なんだから、ちゃんと答えて」
「だいぶ根に持ってるんだね」
「それで? どこ行ってたのよ」
「詳しくは体育祭が終わってからちゃんと話すけど」と前置きした葵は、業者に呼ばれて、タイヤの予備が置いてある体育館裏に行っていたことを話す。
「どうして一人で動いたの」
「それもちゃんと後で話すよ。心配掛けて、ごめんなさい」
葵はみんなに頭を下げて謝る。
「心配掛けたと、ちゃんとそう思ってるならいいわ」
「ツバサくん……」
「そんなことも思ってないようだったら、友達解消してやろうと思ったのよ」
「そ、それは嫌だよ……!」
「ちゃんとわかってるんだから、それはいいって言ってるじゃない。ほら、三人の応援するんでしょ」



