すべてはあの花のために②


「どうしたの。何かあったの」


 離れる前に一度司会から帰ってきたヒナタが顔を出す。オウリの言った通り、怒られなかったので拍子抜けした。


「うん。ちょっとね」

「オレには言えないこと?」


 眉間に皺を寄せて、ほんの少し寂しそう。美少年がこんな顔をしたら、大好物の女性に襲い掛かられるだろうに。


「ううん。後でちゃんと言うよ」

「……本当だよね」

「うん。ヒナタくんごめんね」

「は? どういう意味?」


 苦笑しながら、葵は答えた。


「君が大正解だったという意味です」

「――! ……ッ」


「後でちゃんと話して」と、一言そう言い残して、彼は入場門へと急いでいった。

 その後が怖いんだけどなあと思っていると、ついにツバサの出番がやってくる。どうやら彼は一番後ろで引っ張るらしい。
 始まるや否や、ツバサは腰の位置を落とし、後ろへ重心を倒す。まるで綱引き選手権でも見ているようだった。


「アンタ、どこ行ってたのよ」


 競技を終えたツバサが帰ってきてすぐに、葵はその細腕を掴んで筋肉量を確かめる。


「こんな細い腕の、どこにそんな力があるの……」

「ちょっと。久し振りのまともな会話なんだから、ちゃんと答えて」

「だいぶ根に持ってるんだね」

「それで? どこ行ってたのよ」


「詳しくは体育祭が終わってからちゃんと話すけど」と前置きした葵は、業者に呼ばれて、タイヤの予備が置いてある体育館裏に行っていたことを話す。


「どうして一人で動いたの」

「それもちゃんと後で話すよ。心配掛けて、ごめんなさい」


 葵はみんなに頭を下げて謝る。


「心配掛けたと、ちゃんとそう思ってるならいいわ」

「ツバサくん……」

「そんなことも思ってないようだったら、友達解消してやろうと思ったのよ」

「そ、それは嫌だよ……!」

「ちゃんとわかってるんだから、それはいいって言ってるじゃない。ほら、三人の応援するんでしょ」