「……あ。そういえば無線はどこに……」
無線を探していると、後ろからぐっと腕を引かれた。さっきの今で、葵はさっと臨戦態勢を取り、引っ張った相手の腕を逆に掴み背負い投げにかかる。しかし、葵の足の間に相手の足が入れられ、それはあっさり阻止された。
「(あれ? この靴は……)」
見たことある靴に驚いていると、肩をぽんぽんと叩かれ振り返る。
〈何かあったの?!〉
そう文字が打たれたスマホ画面を前に突き出しているオウリがいた。
「オウリくん! どうしたの?」
また彼はスマホに文字を打ち込む。
〈それはこっちのセリフ!
あまりにも遅いからみんな心配してる!〉
そんなに時間が経ってしまっていたのか。
「それは申し訳ない! でも、どうしてオウリくんが?」
〈今はもう3年のムカデ競走終盤
その次は2年男子全員の騎馬戦
動けたのがおれだけ〉
ああ、なるほど……って。
「もうそんなとこまでいってんの?! しかも得点係今いないじゃん! ……どうしよう。悪魔様の雷が落ちる……!」
葵が頭を抱えながら絶望していると、オウリはクスッと笑った。
〈それは多分大丈夫だと思うよ?
得点係もきっくんがしてくれてるから
それにしても、本当にどうしたの?
さっきみんなで無線に呼びかけてたんだけど〉
「(きっくん……キク先生か)ああ、無線落としちゃって。今探してたとこ」
〈落とした?
あーちゃん
今ここで何があったの〉
彼の目が鋭くなる。きっと彼らが縛られていたロープを見つけたのだろう。
「……うん。それは体育祭が終わったら、ちゃんとみんなに報告する。今日はもう大丈夫だと思うから、早く戻って仕事しに行こう?」
葵はそう言ってオウリの腕を掴んで無理矢理腕を組む。少し彼は照れているようだが、葵は気付かなかった。
「(ヒナタくんの勘は正解だ。しかも狙いは、やっぱり『わたし』だった)」
依頼主は――……一体誰だ。



