「……はい。たった今終わりましたが、あなたは?」
見たこともない生徒だった。それこそ、本当に桜の生徒なのかどうか。
「ボクのことはいいんですぅ。それよりも……体育祭、楽しんでますかぁ?」
彼は一体何が聞きたいのか。
当たり前の問いかけに「はい。楽しませていただいております」と答えると、彼は心底おかしそうに笑い出し。
「そうですかそうですかぁ! それはよかったですねぇ。今年は楽しめて?」
「――!?」
何故、彼は知っている。
端から見れば昨年の体育祭だって、普通に楽しんでいるように見えたはずだ。
「あ、あなたは一体……」
嫌な予感がする。そして、こればっかりは逃げられそうにない。
「……あなたはそれでよかったんですかねぇ。【仮面】、剥がれすぎじゃないですぅ?」
「――!」
一体何者だ。どうして、そんなことまで知っているんだ。
「何を仰っておられるのか、わかりませんが」
「ふ~ん? まぁ、ボクはどうでもいいんですけどねぇ。ああ、そういえばボクからの【プレゼント】は喜んでいただけましたかぁ?」
「え? ぷ、ぷれぜんと?」
彼は、一体何を言っている? 何ももらった記憶なんて――……。
「――ッ!」
違う。もらったんじゃない!
「まぁこれは、ボクからの軽いご挨拶ですぅ。他でもない『あなたへ』ねぇ?」
「……あなたが、資料を隠した犯人ですね」
不自然に消えた、業者に渡すはずの資料。どこに行ったのかと思えば……。
「(……こいつは)」
――『わたし』を知っている。



