すべてはあの花のために②


「……はい。たった今終わりましたが、あなたは?」


 見たこともない生徒だった。それこそ、本当に桜の生徒なのかどうか。


「ボクのことはいいんですぅ。それよりも……体育祭、楽しんでますかぁ?」


 彼は一体何が聞きたいのか。
 当たり前の問いかけに「はい。楽しませていただいております」と答えると、彼は心底おかしそうに笑い出し。


「そうですかそうですかぁ! それはよかったですねぇ。今年は(、、、)楽しめて?」

「――!?」


 何故、彼は知っている。
 端から見れば昨年の体育祭だって、普通に楽しんでいるように見えたはずだ。


「あ、あなたは一体……」


 嫌な予感がする。そして、こればっかりは逃げられそうにない。


「……あなたはそれでよかったんですかねぇ。【仮面】、剥がれすぎじゃないですぅ?」

「――!」


 一体何者だ。どうして、そんなことまで知っているんだ。


「何を仰っておられるのか、わかりませんが」

「ふ~ん? まぁ、ボクはどうでもいいんですけどねぇ。ああ、そういえばボクからの【プレゼント】は喜んでいただけましたかぁ?」

「え? ぷ、ぷれぜんと?」


 彼は、一体何を言っている? 何ももらった記憶なんて――……。


「――ッ!」


 違う。もらったんじゃない!


「まぁこれは、ボクからの軽いご挨拶ですぅ。他でもない『あなたへ』ねぇ?」

「……あなたが、資料を隠した犯人ですね」


 不自然に消えた、業者に渡すはずの資料。どこに行ったのかと思えば……。


「(……こいつは)」


 ――『わたし』を知っている。