すべてはあの花のために②


『次は、1年生による特別プログラム。よさこい節です』


 穏やかな気持ちになる声でアカネがそう言うと、太鼓の音とともに1年生が一斉にグラウンドへ入ってくる。
 全員鳴子を持っているはずなのに、まだ音は聞こえない。そしてまた太鼓が鳴るとともに下を向いていた顔をバッと正面へと上がる。
 生徒会室の目の前には、よく見えるブラウンとピンクとオレンジの頭。彼らの目は射止められてしまうかと思うほどの気迫があった。


「(……か、格好いいじゃん)」


 なんだか目を合わせるのが怖くなった葵は、キサを引き連れ早々に席を外した。


「どうしたのあっちゃん。まだ早いんじゃない? もうちょっとあいつらの演技見られるよ?」

「いや。あのままいたら、わたしは蛇に睨まれた蛙になってしまう気がして」


 そう言うと「ああ。なるほどね」と納得したキサ。


「わっ、わかるの?」

「うん。十中八九原因はあっちゃんでしょう」

「ええ!? わ、わたしなんか悪いことした?」

「悶々としてるのよ。自分じゃなかったことにね?」


 キサはウインクしながら教えてくれたけれど。


「(いやいや、アカネくんの話が気になってしょうがないだけなんだけど)」


 そうしているうちに、入場門で待機してたら、演技が終わって出てきた三人に“逃げたな?”って言われてるような視線を向けられたので、取り敢えず蛙さんになる前に視線を逸らしておいた。


「(うう~。テントに帰りたくないよお~)」