「アオイちゃん、キクちゃん先生のプレゼントどうする?」
「んーまだ時間あるし、アキラくんと行くから大丈夫!」
その後気を遣ってくれたカナデと、最後まで心配そうにアキラを見ていたとツバサを何とか観光へ送り出した葵は、残って彼の様子を見ることに。何時間経っても起きないアキラは、昼食も食べずにそのまま寝てしまっている。
「(もしただの寝不足なら寝かせてあげておきたいけど、きっとこれはそうじゃない)」
それでも今はどうすることもできなかった葵は、ただアキラの頭をゆっくり撫でながら、知っている子守歌を歌った。
「……ん……」
そうしていると、身動ぎしたアキラは手探りで何かを探すような仕草をし始める。
その手をそっと握ってあげると、アキラはゆっくりと目蓋を押し上げた。けれど、まだ寝惚けているらしい。
「……かあ、さん……」
結婚は疎か、こんな大きな子を産んだ覚えはないけれどとくすり笑っていると、アキラはまた何かを呟いた。痛みを伴うほど強く、握られた手に力が籠もる。
「ッ、アキラくん……?」
「――……にい」
「え?
「……し。んっ……」
母を呼ぶよりも、切なく悲しい声。
誰かの名前を、彼は何度も何度も呼んだ。
まるで……救いを求めるように。
……一人にしないでと、孤独を埋めるように。



