生徒会のテントに戻ってきたら、みなさん大層ご立腹。二人してギリギリまで怒られてしまった。
でも、葵とアカネは視線を合わせてまた笑う。それが癪に障ったのか、カナデとオウリ以外には、その後もめちゃくちゃお説教されてしまいました。
『時間になりました。生徒のみなさんはグラウンドへ整列してください』
先程まで話していた、彼のやさしい声がマイク越しに聞こえる。
グラウンドにきちんと整列された生徒たち。彼らの背筋はピッと伸び、とても堂々としていた。
『――開会の言葉』
カツカツと、音を立てて台の上に上っていく。すべての視線が、アキラに集まった。
『只今より、桜ヶ丘体育祭を、開催致します――』
その言葉とともに、校舎に彼らの合作が広がった。
「(――……う、そ。ほんとうにこれ、カナデくんとアカネくんが……?)」
言葉になどできなかった。彼らの作品が……彼らの思いが。途轍もなく『そこ』に表れていた。
叶わない願いだからと、言っちゃいけないからと、そんなのもう関係ない。彼らの思いが、溢れている。
「(絶対に、彼の思いをわたしが叶えてあげるから)」
そんな意思を込めた瞳をしていたからか。隣にいたアカネと、斜め前にいたカナデの、少し困ったような、でも嬉しいような。そんな表情が見えた気がした。
準備体操をし終えると、アカネのやわらかい声で、100m走の準備をするようアナウンスが流れる。
「あっちゃん。いつ見てもすごいね……」
「あ……うん。そうだね……」
昨日準備した状態から、テントがすごく煌びやかになっていた。それだけではなく、生徒会のテントには一人一人の横断幕まで飾られている。早朝に、女子が溢れかえっていたのは目撃されていたが、まさか葵やキサの分まで横断幕が用意されているとは思わず。
なんだかアイドルになった気分になった葵だった。



