「こんなのアカネくんの心の痛みに比べたら屁でもないよっ! だから、わたしはいつでもこうなる覚悟はあるよ!」
そう言って受け身を取った腕を突き上げる。「でも」と葵は続ける。
「カナデの噂で、なんとなくアカネくんが怒った理由だけわかったんだけど、それでもわけがわからないままされるのは嫌だと思ったんだ。それに、わたしはただのはけ口じゃないからね! アカネくんの心を軽くしてあげるお手伝いだってお安いご用だっ」
チカゼのようににかっと笑うと、一瞬目を見開いたアカネは「ははっ。こういうことか~」と笑う。
「カナデの噂はちょっと文句言おうかとも思うけど、そう言ってもらえてもうすごく軽くなったよ!」
ここが――と、彼は自分の胸に……――心に、そっと触れる。
「だからそのお礼に。おれの話聞いてくれる?」
この言い回しが流行なのかと思うくらい、目の前の彼も、噂の根源のような言い方をして笑っていた。
「……うんっ。お願いしようか――」
――なって、言い切る前に、二度目の警告。
『ねえ。何回言えばわかるわけ? いい加減始まるんですけど? みんな始められなくて困ってるんですけど? 二人で門の前でイチャついてる暇があったら早く帰ってきてもらえませんかねえ? ええ?』
というか悪魔様、見えていらっしゃるんですね。
「ぷっ。……じゃあアカネくん、戻ろっか?」
「ははっ。……うんっ! そうだねあおいチャンっ!」



