そうしたら案の定「ええ!?」って驚いてたから。
「そんな勝手にわたしに当たるなんて許さない! 月に代わって、お仕置きしちゃうんだぞ?」
流石はオタク。ポーズを決めたら、何でも嬉しそうだった。
「じゃあどうして八つ当たりしちゃったのか教えてよ。わたしは、聞いてもいいんじゃないかと思うんだけどな?」
アカネはどうしようかと悩んでいるようだった。もう一押しかなと思っていた、その時。
『ちょっと下僕。何やってんの? もう始まるんですけど? あんたちゃんと業者さんに指示してよ? スローガンのとこ人数足りない気がするんだけど??』
と問答無用で無線が入ってきたので、やむを得ず断念。悪魔さんにちゃんと指示は出していることは報告したので、「そろそろ戻ろうか」と校内へと戻ろうとする。
そうしたら受け身を取ってない方の腕を取られて、彼の方を向かされた。
「あ、アカネくん?」
「痛かった?」
必死な顔をしてそんなことを聞いてくるから、素直に「うん。痛かった」と答えた。ここは嘘はよくないと思ったから。こうなっている時点で、彼もどれぐらい痛いのかわかっているはずだから。
「……っ、ごめん! ちょっと我を忘れてた! あおいチャンにこんなことをするなんておれ、……最低だっ」
「我を忘れるほど、わたしに当たってくれたんだね」
「……あおいチャン?」
アカネは戸惑っていた。だって、『くれた』ということは、そうしてくれて『ありがとう』という意味だから。
「アカネくんのはけ口になれたなら嬉しい」
「え。……え? だって、痛かった……でしょう?」
目元はよく見えない。けれど口ははくはくと動いていて、どうすればいいか困っているようだった。



