すべてはあの花のために②


 そうしたら案の定「ええ!?」って驚いてたから。


「そんな勝手にわたしに当たるなんて許さない! 月に代わって、お仕置きしちゃうんだぞ?」


 流石はオタク。ポーズを決めたら、何でも嬉しそうだった。


「じゃあどうして八つ当たりしちゃったのか教えてよ。わたしは、聞いてもいいんじゃないかと思うんだけどな?」


 アカネはどうしようかと悩んでいるようだった。もう一押しかなと思っていた、その時。


『ちょっと下僕。何やってんの? もう始まるんですけど? あんたちゃんと業者さんに指示してよ? スローガンのとこ人数足りない気がするんだけど??』


 と問答無用で無線が入ってきたので、やむを得ず断念。悪魔さんにちゃんと指示は出していることは報告したので、「そろそろ戻ろうか」と校内へと戻ろうとする。
 そうしたら受け身を取ってない方の腕を取られて、彼の方を向かされた。


「あ、アカネくん?」

「痛かった?」


 必死な顔をしてそんなことを聞いてくるから、素直に「うん。痛かった」と答えた。ここは嘘はよくないと思ったから。こうなっている時点で、彼もどれぐらい痛いのかわかっているはずだから。


「……っ、ごめん! ちょっと我を忘れてた! あおいチャンにこんなことをするなんておれ、……最低だっ」

「我を忘れるほど、わたしに当たってくれたんだね」

「……あおいチャン?」


 アカネは戸惑っていた。だって、『くれた』ということは、そうしてくれて『ありがとう』という意味だから。


「アカネくんのはけ口になれたなら嬉しい」

「え。……え? だって、痛かった……でしょう?」


 目元はよく見えない。けれど口ははくはくと動いていて、どうすればいいか困っているようだった。