それからずっと泣き続けた葵を、ただただカナデは抱き締めていてくれた。
落ち着いてきた頃に「もう大丈夫だよ」と顔を上げようとしたけれど、どうしてか上手くいかない。
「かなで、くん……?」
彼はため息をつきながら、何かを納得したように呟きながら、時々葵の毛先を指で摘まんで遊んでいた。
「今日さ、アオイちゃん途中でいなくなったでしょう? ほらコスプレしてた時」
「いちいち言わんでいい」
「アオイちゃんがいないって、一番に気づいたの、多分ヒナくん」
「え?」
「すごい心配そうにしてた。ヒナくんってば、心配しすぎで無線使おうとしてたんだよ? そんな風になってるのに、アオイちゃんのこと嫌いなわけないよ」
「……わ。たし……」
「だからアオイちゃんは、ただ普通に話をすればいいんだと思うよ?」
カナデのやさしい言葉をゆっくり飲み込んで、ゆっくり体の中に落とし込んだ。
「……うん。わたし。ひなたくんと。ふつうに話す」
「うん。それでいいと思うよ」
「ありがとうカナデくん。落ち着いた」
「そっか。それはよかった」
ゆっくりと離れていったカナデに、「よしっ。じゃあ早速風の噂を聞かせてくれ!」と頼んだら、また笑われてしまったけれど。
「……やっぱり言わない?」
「言う言うごめんごめん。じゃあ、なんであいつが怒っちゃったのかだけね?」
ウインク付きで、カナデはアカネの話をしてくれた。
「あいつは【お願い】しちゃったんじゃないかと思う。絶対口に出しちゃいけない……ううん。絶対に叶わないお願いをさ」
「……叶わない、願い……」
「だからそれを……夢を、絶対に叶えてくれる魔法少女に、俺はお願いしたんじゃないかなと思って。それを言ってしまったから、聞かれてしまったから、あいつは怒ったんだと思う」
「どうかな? 伝わったかな」と、やさしい表情を浮かべる彼の目を真っ直ぐ見つめて、葵は答える。
「言っておくけど、カナデくんも道連れにするからね」
「えっ、俺も?」
「だって心配なんでしょう? だから一緒に行くよ!」
「……俺、絶対怒られるわ」
「わたしも一緒に謝ってあげるから」
「もう風の噂でも何でもないじゃん」
「じゃあ、カナデの噂で!」
「いや『カ』しか合ってないから!」
言い合いをしながら家まで送ってもらったが、その間ずっと葵の肌の感触とか感想をいろいろ言ってきたので、取り敢えずその度に殴っておいた。明日は多分、カナデの方が湿布だらけなんじゃないかと思う。



