すべてはあの花のために②


「誰かに何か言われちゃったのかな」


 黙り込んでしまった葵を、カナデは心配そうに見つめた後、ふっと笑って葵の頭を撫でてくる。
 そんな顔をしたつもりは、……全くなかったのに。

 彼は撫でている手を止めて、今度はぽんぽんとやさしく叩いてくれた。


「ヒナくんに、何か言われちゃったかな」

「! み、見てたの……?」

「ストーカーだと思われてんの俺。違うから。やめてください」

「なっ、なんでわかったの」


 葵の上目遣いにカナデは一瞬言葉に詰まるも、軽く咳払いをして答えてくれる。


「俺らの中でそんなことをアオイちゃんに直接言えるのは、ヒナくんしかいないから。だからアオイちゃんは戸惑ってるんじゃないの?」


 認めたくはなかったけれど、彼の言う通りなのだろう。


「もし思ってたとしても、ストレートにキツい言葉なんて言えないよ。俺はアオイちゃんに嫌われたくないもん」

「……ヒナタくんは、わたしが嫌いなんだ」

「……どうして、そう思ったの」

「言い方がね。完全な拒絶だったから。だから、そうなのかなって、思って……」


 だから……だから。


「……わたし。どうして……きらわれちゃったんだろうって。なに。しちゃったんだろうっ。て……っ」

「あ、アオイちゃん!」


 こんなことで泣くつもりなんかなかった。泣いたら、迷惑をかけるってわかってたから。


「なのにひなたくん。いつもとかわんないし。いつもどおりにしてる……けど。……っ。わたし。どうしたらいいか。わかんなくて……っ」


 カナデの力強い抱擁に、次々と不安が溢れてくる。
 嫌いなら嫌いと。ハッキリ言ってもらえれば、まだ気持ちが楽になるのに。友達なのに近づかないでって言われたら……。


「ひっく。……ひなたくんとっ。どんな、かおして……ひっく。はなせば、いいか。わから、ない……っ」