「誰かに何か言われちゃったのかな」
黙り込んでしまった葵を、カナデは心配そうに見つめた後、ふっと笑って葵の頭を撫でてくる。
そんな顔をしたつもりは、……全くなかったのに。
彼は撫でている手を止めて、今度はぽんぽんとやさしく叩いてくれた。
「ヒナくんに、何か言われちゃったかな」
「! み、見てたの……?」
「ストーカーだと思われてんの俺。違うから。やめてください」
「なっ、なんでわかったの」
葵の上目遣いにカナデは一瞬言葉に詰まるも、軽く咳払いをして答えてくれる。
「俺らの中でそんなことをアオイちゃんに直接言えるのは、ヒナくんしかいないから。だからアオイちゃんは戸惑ってるんじゃないの?」
認めたくはなかったけれど、彼の言う通りなのだろう。
「もし思ってたとしても、ストレートにキツい言葉なんて言えないよ。俺はアオイちゃんに嫌われたくないもん」
「……ヒナタくんは、わたしが嫌いなんだ」
「……どうして、そう思ったの」
「言い方がね。完全な拒絶だったから。だから、そうなのかなって、思って……」
だから……だから。
「……わたし。どうして……きらわれちゃったんだろうって。なに。しちゃったんだろうっ。て……っ」
「あ、アオイちゃん!」
こんなことで泣くつもりなんかなかった。泣いたら、迷惑をかけるってわかってたから。
「なのにひなたくん。いつもとかわんないし。いつもどおりにしてる……けど。……っ。わたし。どうしたらいいか。わかんなくて……っ」
カナデの力強い抱擁に、次々と不安が溢れてくる。
嫌いなら嫌いと。ハッキリ言ってもらえれば、まだ気持ちが楽になるのに。友達なのに近づかないでって言われたら……。
「ひっく。……ひなたくんとっ。どんな、かおして……ひっく。はなせば、いいか。わから、ない……っ」



