「そんなの心配に決まってる!」
「だったらなんで聞かないの?!」
カナデは苛立ちを隠せない。
「聞いたらわたしに教えるの? たとえアカネくんがそうして欲しくなくても?」
「それは……」
「教えてくれようとしていたカナデくんを責めてるわけじゃないよ。ただ向こうの気持ちも、汲んであげて欲しくて」
「……うん。そうだ。そうだよね」
「だからわたしは、聞きたいことがあるんじゃないの? って聞いたんだ」
葵がふわりと笑うと、彼もふわりと笑い返してくれる。
「うん。でも聞きたいことは、アオイちゃんが言えないみたいだったから、こればっかりはしょうがない」
「だから」と続ける。
「全部じゃないんだけど、怒った理由だけはちゃんとアオイちゃんに知っておいてもらいたいと思って。……きっと今頃、アオイちゃんにあんなことしたこと、すごい後悔してると思うから」
「……ふふっ。なんか、懐かしいね」
「俺もう気にしないでって言ったのに」
「ううん。ただカナデくんは、本当にやさしいなと思っただけ。……望んでなくても伝えようとしてくれてるカナデくんは、本当にアカネくんが大好きなんだね」
葵はそう言って、僅か目を伏せた。
「俺は女の子にしか興味ないんだけど」
「うん。それとこれとは違ったよね今」
今はその流れじゃなかったはずだぞ?
「嘘嘘冗談。……それで? 聞いてくれる?」
「本当はさ、聞かない方がいいんだろうなって思ってる。でも、心配してるカナデくんの気持ちも無下にできないし、何よりわたしも心配だから……」
「うん。だから?」
「…………か」
「か?」
「……風の噂で聞いたってことにしとく」
そっぽを向きながらそう言うと、隣の彼は大爆笑。
「アオイちゃんって、そんなだったっけ? 結構遠慮なく近づいてきてなかった?」
笑いすぎて、彼は涙を拭いながら聞いてくる。
「それは……」
……どうして、だっけ。今まではちゃんと、近づけたのに。それなのに――。
『オレには近づかないでくれる』
あの、たった一言だけで……?



