すべてはあの花のために②


「カナデくん。どうして残ってくれたの?」

「え? それは、薬塗ってあげようと思って……」

「聞きたいことが、あるんじゃなくて?」


 そう言うと彼は弾かれるように顔を上げる。その顔は、とっても情けない顔だ。


「ほらほらそんな顔しないの。遅くなっちゃったし、帰りながらでもいい?」

「……うん。少しだけ、話したいかも」


 生徒会室を後にした葵は、携帯さんに失礼のないようにした後、情けない表情のままのカナデに尋ねる。


「そんな顔しないの。心配なのも何もしてあげられないのも悔しいと思うけど、向こうはそんな顔カナデくんにして欲しいと思ってないよ?」

「やっぱり知ってた。気付いてたんだアオイちゃん」


 ため息をついたカナデは、公園のベンチを指差した。どうやら、座って話したいらしい。


「俺らが作品作ってるの見た時、どう思った? 取り憑かれたようにかいてたでしょ俺ら」


 ずっと見てたでしょ? と、そんな意味が込められている。


「うん。だから、二人の邪魔をさせてもらった」

「だよねーやっぱり。あのマグカップ、粉砕してたから」

「そ、そこまでじゃなかったはず……」


 でもそうでもしないと、二人ともそこから帰ってきそうになかったから。


「アカネはさ、描いていたいんだよ」

「そっか。そうなんだね」

「でも、なんでアオイちゃんにあんなことしたのかな……」

「……誰にも言えないの。それは彼との約束だから」

「……何か、アオイちゃんに言ってた?」

「ううん。……多分、わたしにじゃないと思う」

「だよね、やっぱり」


 そう言ったきり彼は口を噤んだかと思ったら、しばらくして「……ああああ゛ーッ!!」といきなり叫びだした。


「(は、初めてわたしが警察に電話をするとこだった……)」


 そんなことを葵が考えていると「アオイちゃんはさ!」とカナデが声を張る。


「アカネのこと、心配じゃないの!?」