すべてはあの花のために②


 彼の腕は、震えていた。


「それはしょうがないよ。それにアカネくんをああさせてしまった原因はわたしだから、これは自業自得。カナデくんが謝ることなんか、一つもないんだよ?」

「……っ。うん……」

「よしよし。カナデくんはどうしてそうなっちゃったのかな。わたしには教えてはくれないかな」

「……。うん。ごめんね」

「謝らないで。大丈夫だよ」


 今度は葵が、カナデの背中を撫でてあげた。


「(本当に、みんなはやさしすぎるよ……)」


 しばらく撫でてあげていると、彼の手が背中に移動した。抱き締め返してくるのかと思ったら、急に圧迫感が無くなり、そして――――キャミソールの中へ、冷たくなった手を入れてきた。


「ちょ。カナデくん何して」

「アオイちゃん着痩せするんだねー」


 そう言って、ブラの上から遠慮なく胸を触ってくる。


「かなでくん! ほんとに怒るよ!」

「できる? ならやってみてよ」


 いきなりどうしたのか。彼は葵をベッドへ倒し、覆い被さってくる。


「アオイちゃん今、自分がどんな恰好してるか知ってる?」

「だって、かなでくんがぬげって」

「それで、脱げって言われたらそうやって自分で脱ぐんだ」

「ちっ、ちがっ」


 葵の両手を頭上で固定したカナデは、そのままスカートの中に手を入れようとして――――。


「か、カナデくん大丈夫!?」


 慌てた葵が逃げようと蹴り上げたところが、まさかの彼の急所へ直撃。痛すぎて声も出ないカナデは、大事なところを押さえて悶絶中。その間に葵は制服に着替えた。


「アオイちゃん酷いよー。俺の商売道具が使い物にならなくなったら、どうしてくれるのー。責任取ってくれるのー……?」

「カナデくんわかってる? そうなったの自業自得だぞ?」


 本気で涙を流す彼の背中を撫でていると、「どうせなら蹴ったとこ撫でて欲しい」とかほざいたので、今回ばかりは遠慮なく拳骨一発入れておいた。


「いや〜ごめんねアオイちゃん。俺のこと軽蔑しちゃったかなー?」

「大丈夫。すでにしてる」


 冗談で言ったつもりなのに本当に落ち込み始めたから、「どうして友達を軽蔑しないといけないの」と言い直したけれど、「そっかー」と返す彼の寂しそうな表情は、どうやっても直らなかった。