すべてはあの花のために②


「やっぱり……結構赤くなってる」


 キャミソールだけになった葵の腕を取るや否や、カナデは救急箱から塗り薬と湿布を取り出す。


「ほら腕出して。出さないとそのキャミ取るよ」


 小さな脅しに渋々葵は受け身を取った腕をカナデの前に差し出す。カナデはゆっくり丁寧に、赤くなっているところに薬を塗り込んでくれた。


「あ、ありがとう……」


 湿布まで貼ってくれた彼へ素直にお礼を言うが、カナデはキャミを捲れと言う。


「背中……それか腰か。そこも打ってるでしょうが」

「さ、流石にそこは自分で――」

「見えないでしょ届かないでしょ早く後ろ向いて」

「は、はい」


 カナデに圧され、抵抗むなしく葵はキャミソールを上に捲る。患部をじっくり見た後、少し赤くなっていたのだろう腰元と、左側の肩の方にも彼は薬を塗ってくれた。


「他に打ったところは?」

「だっ、大丈夫だと思う!」


 カナデが後ろから葵の顔を覗きながら言ってくるので、葵は反対側を向いてそう言った。


「……本当に?」

「う、うん。だから……お願いだから、ちょっと離れて」


 今度はその反対側から覗き込むように言われ、葵は赤くなった顔を背けながら、彼の胸を押し返す。


「ここも打ったの? こんなに真っ赤にして」

「!」


 そっと葵の頬を包み込むように、彼の大きな手が触れてくる。
 真っ正面から見つめられて、葵は恥ずかしさと情けなさで目が潤むのを止められない。


「……そんな顔、しちゃダメだよ」


 そう言ってカナデは、葵をふわりと抱き締めた。


「……かなでくん?」

「ごめんねアオイちゃん」

「?」

「そうなる前に、助けてあげられなくて」