葵たちの様子がおかしいことに気づいたのか、慌ててみんなが駆け寄ろうとしたところで、葵の体は一瞬宙に浮き――――ダンッッと大きな音を立てて背中から落下した葵は、そのまま上から彼に押さえつけられた。
「(――ッ。チカくんごめん。これは確かに痛いかも……)」
((いやいや。謝ってる場合じゃないから))
受け身はとったものの、硬い床に大外刈りを決められた葵を上から覗き込むように、アカネは睨み付けてくる。葵に恐怖を植え付けるほどの鋭さで。
「……誰かに言ってみろ。ただじゃおかないから」
聞き間違いだと思いたかった。彼からそんな言葉が出るなんて、思いたくなくて。
けれど次の瞬間にはいつも通りのやさしいアカネ戻っていて、そっと葵を引っ張り起こしてくれる。
「もお~あおいチャンっ! 急に技を仕掛けて欲しいだなんて! やっぱり変態さんなんだね? このまま警察に連行してあげよっかあ?」
「いーやー! それだけはお願いします! やめてくださーい!」
これ以上はダメなんだろう。誰にも気づかれちゃいけない……もちろんみんなにも。
「あ。もしもし警察ですか。今友達が変態に襲われてます。場所は――」
「ちょちょ! 待って待って! やめてえー……!」
ヒナタがもう警察に連絡しているのが聞こえてしまって、慌てて止めに入る。
「それはそうと! みんなここに来てるけどお、業者さんたちの指示は終わったの?」
「後は整備し終わったら完了だな」
「そうなんだあ! じゃあおれらも早く行って、前日最後のお仕事頑張ろおー!」
まるで、『早くここから出たい』と言いたげにアカネはアキラの背中を押す。みんなを促して、彼はさっさと出て行ってしまった。



