「久し振りだね」
「トーマさん……」
葵は少しだけ肩を竦めながら、軽く頭を下げる。
「約束、覚えててくれたんですね」
「もちろん。また会えて嬉しいよ」
「……わたしもです」
二人で小さく笑い合う。
「元気だった?」
「はい。トーマさんは?」
「葵ちゃんに会いたくてしょうがなかったけど、いろいろこっちも大変でね。こう見えて受験生だし」
「でもトーマさん頭がいいですから。きっとすごいところに行くんでしょう?」
「悪くはないと思うけど、そんなでもないよ。でもちょっと目標ができたから、それに向かって頑張ってる。今日はその息抜きも兼ねて」
「そうなんですね! 応援してます!」
「でも一番の理由は、葵ちゃんに会いたかったからだよ」
「ふふっ。ありがとうございます。でも数年会ってなかったみんなとも、しっかり楽しんでくださいね?」
「なんか葵ちゃん、ちょっとレベルアップした? 俺も頑張らないと」
「楽 し ん で く だ さ い ね ?」
「はーい」
それとは別にと、キクの誕生日パーティーを企画していることを伝える。
「なるほど。それってグループ分けとかもうした? まだだったら俺とペア組もうよ」
「そうして差し上げたいのは山々なのですが……」
視界に入るのは、宿へ楽しそうに移動しているみんなの背中。
「……何かあるの?」
「ちょっとだけ気になることがあって」
「俺も一緒じゃダメなことなんだね」
「そういうわけじゃないんです。ただ、本当に少しだけ気になってるだけで……」
「葵ちゃん」
「はい」
「無理はしないようにね」
「! ……はい。ありがとうございます」
頷き合った二人は、少し遅れていたみんなの元へ歩みを進めた。



