すべてはあの花のために②


「久し振りだね」

「トーマさん……」


 葵は少しだけ肩を竦めながら、軽く頭を下げる。


「約束、覚えててくれたんですね」

「もちろん。また会えて嬉しいよ」

「……わたしもです」


 二人で小さく笑い合う。


「元気だった?」

「はい。トーマさんは?」

「葵ちゃんに会いたくてしょうがなかったけど、いろいろこっちも大変でね。こう見えて受験生だし」

「でもトーマさん頭がいいですから。きっとすごいところに行くんでしょう?」

「悪くはないと思うけど、そんなでもないよ。でもちょっと目標ができたから、それに向かって頑張ってる。今日はその息抜きも兼ねて」

「そうなんですね! 応援してます!」

「でも一番の理由は、葵ちゃんに会いたかったからだよ」

「ふふっ。ありがとうございます。でも数年会ってなかったみんなとも、しっかり楽しんでくださいね?」

「なんか葵ちゃん、ちょっとレベルアップした? 俺も頑張らないと」

「楽 し ん で く だ さ い ね ?」

「はーい」


 それとは別にと、キクの誕生日パーティーを企画していることを伝える。


「なるほど。それってグループ分けとかもうした? まだだったら俺とペア組もうよ」

「そうして差し上げたいのは山々なのですが……」


 視界に入るのは、宿へ楽しそうに移動しているみんなの背中。


「……何かあるの?」

「ちょっとだけ気になることがあって」

「俺も一緒じゃダメなことなんだね」

「そういうわけじゃないんです。ただ、本当に少しだけ気になってるだけで……」

「葵ちゃん」

「はい」

「無理はしないようにね」

「! ……はい。ありがとうございます」


 頷き合った二人は、少し遅れていたみんなの元へ歩みを進めた。