すべてはあの花のために②


 その後順調に作業は進み、豪華絢爛なテントを立てたり、カナデとアカネの合作を校舎に垂らす準備をしたり、競技に使う道具の確認など、ほぼ準備は終わった。


「(特に何もなかった。……なんだったんだろう)」

「そっちはどうだった?」


 そうこうしていると、ヒナタが近づいてくる。特に異常がなかったことを伝えると、彼は俯いて思案に耽った。


「取り敢えず最後まで気は抜かないように。もし何かおかしいと思ったら言って。オレよりあんたの方がよく見えてるんだから」

「う、うん。任せて! ちゃんと言う!」


 そう言って彼は葵のそばを離れ、業者へ指示を出しに行く。まさかそんな風に思っていてくれていたとは知らなかった葵は、彼の背中を見送りながらしばしの間喜んでいた。

 しかしそれも一瞬のこと。僅かに視線を感じ、視線を走らせた。それは、体育倉庫の陰からだった。


「(みんなの視界には入ってると思うから、少しこのままわたしが行ってみよう)」


 感じた視線が嫌なものでなかった葵は、確認のためすぐさま体育倉庫の裏側へ。そこには業者の人が三人ほどしゃがみ込んで、何やら話し込んでいるよう。


「どうかされたんですか?」


 葵が少し遠くからなるべく丁寧に声を掛けてみると、三人はビクッと肩を大きく揺らす。
 葵の顔を確認すると、顔を見合わせた三人のうち一人が、申し訳なさそうにオドオドしながら答える。


「あ、あんた。少しだけ俺らに付いてきてくれねえか?」

「まだ全ての作業が終わったわけではないので、その後ではいけませんか?」

「いや、俺らは仕事終わったらすぐ出て行かないといけないし……」

「ほっ、ほんの10分でいいから、俺らに時間を貸して欲しいんだ」

「(うー………………ん。ま、いいか)」


 一人で行動するなと言われたけれど、もしそれ以上時間がかかるようなことがあれば、誰か気づくだろう。しかしそれだけでは、みんなに心配をかけてしまうので。


「すみません。会長に一人で動くなと言われているので、それはできないんです。誰かもう一人、生徒会を呼んでも構いませんか?」

「そっ、それなら、できればニノくんを呼んで欲しいのだけども!」

「(ニノ……)アカネくん、ですか?」

「そうなんだ! で、でもどうせなら、少し時間差で呼んで欲しいんだけども……」


 今の一瞬で何が起こったのか。彼らの瞳がキラキラと輝き始める。


「えっと……まあ、そういうことならああ――!?(って、なんだなんだあー?!?!)」


 言うが早いか、彼らは葵を引っ張って体育館へと連れて行ってしまった。