すべてはあの花のために②


「アオイちゃん大丈夫?! 怪我してない?!」


 慌てた様子で駆け寄ったカナデは、恐らく先程の大きな音の原因を心配しているのだろう。マグカップ叩きつけただけだけど。

「うん大丈夫。落としちゃったから、また新しいの替わりに買ってくるよー」

「……無事なら、よかったけど……」


 そうしてその日は、三人で仲良く帰ることになった。その帰り道。


「それにしても、本当に二人とも上手なんだね! カナデくん少しだけ見直した!」

「そんなに少しだけのとこを強調しないと褒めてくれないのね……」

「ありがとお! そんなに褒められるとは! えへへ~」


 アカネが嬉しそうに笑う。そんな笑顔を見るだけで、葵まで嬉しくなってしまった。


「それにしても、何したらこんなに上手く――……」


 葵がそんな話をすると、少し二人の顔が陰った。


「(……これは、近づいちゃいけないことだったか……)」


 そう思っていたけど、アカネが苦笑いしながらも教えてくれる。


「おれは……そうだなあ。物心ついた頃から、絵を描くのは好きだったかなあ?」

「そうなんだね! でもアカネくん、空手とか柔道もすごく強いのに」

「アオイちゃん俺の話も聞いてよー!」

「ああハイハイ」

「俺はねー、中学校の時からなんだよー」

「そうなの!? そんな短時間であそこまで書けるって……カナデくん、才能があったんだね」

「何言ってんのアオイちゃん。俺は夜の方が才能あるよ?」

「夜?」

「え。それ聞く? そんなに俺のことに興味持っ――ぐはっ!」


 しかし葵の腰をいやらしく触ってきたので、迷わず裏拳を食らわせておいた。


「お。……俺の。顔が……」

「自業自得じゃい」


 そんなカナデが絡んできたせいで、アカネの顔がどうなっていたかなんて、葵は知る由もなかった。



 そして、やっぱり彼らの後ろに複数の影があったことも――――。