「アオイちゃん大丈夫?! 怪我してない?!」
慌てた様子で駆け寄ったカナデは、恐らく先程の大きな音の原因を心配しているのだろう。マグカップ叩きつけただけだけど。
「うん大丈夫。落としちゃったから、また新しいの替わりに買ってくるよー」
「……無事なら、よかったけど……」
そうしてその日は、三人で仲良く帰ることになった。その帰り道。
「それにしても、本当に二人とも上手なんだね! カナデくん少しだけ見直した!」
「そんなに少しだけのとこを強調しないと褒めてくれないのね……」
「ありがとお! そんなに褒められるとは! えへへ~」
アカネが嬉しそうに笑う。そんな笑顔を見るだけで、葵まで嬉しくなってしまった。
「それにしても、何したらこんなに上手く――……」
葵がそんな話をすると、少し二人の顔が陰った。
「(……これは、近づいちゃいけないことだったか……)」
そう思っていたけど、アカネが苦笑いしながらも教えてくれる。
「おれは……そうだなあ。物心ついた頃から、絵を描くのは好きだったかなあ?」
「そうなんだね! でもアカネくん、空手とか柔道もすごく強いのに」
「アオイちゃん俺の話も聞いてよー!」
「ああハイハイ」
「俺はねー、中学校の時からなんだよー」
「そうなの!? そんな短時間であそこまで書けるって……カナデくん、才能があったんだね」
「何言ってんのアオイちゃん。俺は夜の方が才能あるよ?」
「夜?」
「え。それ聞く? そんなに俺のことに興味持っ――ぐはっ!」
しかし葵の腰をいやらしく触ってきたので、迷わず裏拳を食らわせておいた。
「お。……俺の。顔が……」
「自業自得じゃい」
そんなカナデが絡んできたせいで、アカネの顔がどうなっていたかなんて、葵は知る由もなかった。
そして、やっぱり彼らの後ろに複数の影があったことも――――。



