「(……あれ。でも、なんかちょっと、二人の様子が……)」
カナデは、何かに取り憑かれたかのように何枚も同じ文字を書いている。端から見れば、すべて同じだ。何が気にくわないのかわからないし、どれも素晴らしい迫力のある文字にしか見えない。
アカネはアカネで、何度も下書きをぐちゃぐちゃにする。彼の作品も、葵から見てみればプロ顔負けの作品ばかりだ。
「(どうして彼らは、こんなにかきたがって……)」
陽はとっくに傾いている。それでも彼らは帰るつもりはないのか、ただひたすらに、書いて描いて、書いて描いて…………このままではきっと、飲み込まれてしまう。自分の作品に。
葵は、自分用にと家から持ってきていたマグカップを手に取り、大きく振りかぶって床へと叩き付けた。
パリーンッ! と大きく鳴った音で、二人はようやく入り込んでいた自分の世界から帰ってきてくれる。
「「あ、あおい。ちゃん?」」
「はいはーい! そうだよー! もう今日は遅くなっちゃったから、そろそろ帰ろ~!」
二人は動揺を隠せない。いつからいたのかとか、どうして止めたのかとか、いろいろ聞きたいことはあるのだろうが。
「もう真っ暗だからさ? 二人と一緒に帰りたいんだけど……いいかな?」
そう言わないと、この二人はこの場から動こうとしないだろう。
葵の言葉でようやく時間の経過に気づいたかのように、彼は外の景色を見て驚いていた。



