すべてはあの花のために②


 葵が見えなくなった後、三人は元来た道を帰っていた。


「ねえアキ。アンタ最近妙に積極的じゃない。どうしたのよ」

「どうもしない。俺は俺」

「アキくんおかしくなくなったはずなのに、なんかまた変におかしくなってるよ」

「え。それは……気をつける」


 暴走した兄のようにはならないようにしなければと、アキラは自分に言い聞かせていた。


「……あの子に、止められたんでしょ」


 ツバサから断定的に尋ねられ、アキラは片耳に触れながら小さく頷いた。


「好きなの?」

「お前らはどうなんだ」

「そう言うってことは本気ってことね」

「アキくんの頭がやっぱりおかしくなってる」


 思わずむっとしていると、ツバサがふっと楽しそうに笑った。


「さあ? どうかしらね。アタシはよくわからないわ?」

「オレはあんな変態お断り」


 ウインクをするツバサに対して、ヒナタからはスマホに触りながら適当にそう返ってくる。
 だからアキラは、わざとらしくほっと息を吐いた。「それはよかった」と独り言ちながら歩みを進める。


「「……よかった?」」


 対して後方で足を止めた彼らが、そう声を揃えた。


「おかげでライバルが減った」


 立ち止まった二人を振り返りながら、不敵に笑う。
 再び歩みを進めると、後方からは「言ってくれるじゃん」と挑戦的な声が。


「……自分の気持ちには、正直にならないとな」


 小さく呟いたアキラ、そしてツバサとヒナタの三人はその後、いつものようにバラバラに家へ帰っていった。