葵が見えなくなった後、三人は元来た道を帰っていた。
「ねえアキ。アンタ最近妙に積極的じゃない。どうしたのよ」
「どうもしない。俺は俺」
「アキくんおかしくなくなったはずなのに、なんかまた変におかしくなってるよ」
「え。それは……気をつける」
暴走した兄のようにはならないようにしなければと、アキラは自分に言い聞かせていた。
「……あの子に、止められたんでしょ」
ツバサから断定的に尋ねられ、アキラは片耳に触れながら小さく頷いた。
「好きなの?」
「お前らはどうなんだ」
「そう言うってことは本気ってことね」
「アキくんの頭がやっぱりおかしくなってる」
思わずむっとしていると、ツバサがふっと楽しそうに笑った。
「さあ? どうかしらね。アタシはよくわからないわ?」
「オレはあんな変態お断り」
ウインクをするツバサに対して、ヒナタからはスマホに触りながら適当にそう返ってくる。
だからアキラは、わざとらしくほっと息を吐いた。「それはよかった」と独り言ちながら歩みを進める。
「「……よかった?」」
対して後方で足を止めた彼らが、そう声を揃えた。
「おかげでライバルが減った」
立ち止まった二人を振り返りながら、不敵に笑う。
再び歩みを進めると、後方からは「言ってくれるじゃん」と挑戦的な声が。
「……自分の気持ちには、正直にならないとな」
小さく呟いたアキラ、そしてツバサとヒナタの三人はその後、いつものようにバラバラに家へ帰っていった。



