あたたかい春の日に舞う、花びらのようで。
さむい冬の日に降り積もる、雪のようでもある。
それは、吹けば飛ぶような、儚い灰燼。
灰白一色の、夢世界。
灰色の空から、小さな欠片がゆっくり、ゆっくりと落ちてくる。
『拗ねているのかい?』
ゆっくり……ゆっくりと落ちていく。
『……ん……』
体に、衝撃があった気がして、ゆっくりと目蓋を上げる。
『……かあ、さん……?』
そう口にしてから、違うと気付く。
主張の強い赤いドレスに、やわらかそうな黒い髪。
可憐で、綺麗で、気高くて。
それから、真っ赤な――――…………。
『……きみも、抜けだしたの?』
どこかちぐはぐなその少女は、きっと自分と同じなのだろう。
『どうして、寂しそうなの?』
そう言われて少し驚く。
そんなにはっきりと、顔に出ていただろうかと。
それと同時に、少し嬉しくもあった。
拗ねているのではなく寂しいのだと、気が付いてもらえたから。
『……きっと、だいじょうぶよ』
その一言が、寂しさを吹き飛ばしてくれたから。
――――――――――………………
――――――…………
「――――ッは」
意識が、急激に浮上する。
まるで今まで息が止まっていたかのように、心臓が暴れ、脳に酸素が行き渡っていく。
「……ふう……」
落ち着きを取り戻してから、短く息を吐く。
何かが磨り減っていく感覚は、何度経験しても慣れはしない。
けれど……何故だろう。
今回は――――……。
「……もうわからないのは、少し……」
悔いが残るかもしれないな。



