守ってやるよ

~芽衣~

千里が『俺が守る』と言ってくれてからしばらく。



梅雨が抜けて夏の気配が訪れてきた。



相変わらず色のない毎日だけど、千里がそばにいてくれるときだけ、それは少しマシなものになる。



例えばね、サボりたいときに一緒にサボってくれたり。



雨は降らないものの、くもりの今日。



やっぱり心は不安定。



千里に「一緒にサボらない?」と言うと何も言わず着いてきてくれる。



本当は良くないよね…。



だけどあたしは心が弱いから、ついつい千里にそうしてしまう。



「そういえば、あの日屋上来てたけど、千里もたまにサボったりするの?」

「あんまりサボったりはしねえけど…あの日はたまたま」

「ふーん…」



やっぱりあんまりサボったりしないんだ…。



あたし、悪いことしてるよね…。



でも、あたしの気持ちを察したのか、千里はあたしの隣であたしの頭をまたぐしゃぐしゃに撫でた。



「気にしてんの? サボりに付き合わせてるの」

「うん…」

「俺が好きでしてんだよ。だいたい俺、頭いいからちょっとサボったくらいで成績落とさねえよ」



そうだ、千里は頭が良かった。



本当はもう少し上のレベルの高校にも行けたはずなのに、近いから、とか言ってこの高校に決めて。



未来を知らなかったあたしは、観里と3人で同じ高校に行ける! なんて無邪気に思ってた。



3人で同じ高校に通って、放課後はみんなで帰ったり、たまには千里を置いて観里と2人で放課後デートしたり…。



そんな風に夢見てた。



夢…だったなあ…。