守ってやるよ

~千里~

兄の観里がこの世からいなくなって4か月。



両親は観里が死んでからずいぶんと泣いていたけど、俺は現実だと思えなくて、ずっと放心状態だった。



現実味のなさは今も同じ。



毎日観里のいない世界で生きながら、どうして自分は普通に生きているんだろうと思ってる。



だけどやっぱり天気の悪い日は来るものがあって。



今日は特にひどい…。



授業なんて受けてらんね…。



逃れるように、屋上に上がった。



雨はまだしきりに降っている。



そのとき、屋上の屋根の下、見覚えのある小さい後ろ姿が目に飛び込んできた。



セミロングに、プリンになった茶色の髪の毛。



芽衣だ…。



観里が死ぬ前のこと。『高校生になるから髪の毛染める!』と言っていたのを思い出す。



あの日から一度も染め直してないのが分かる、痛々しい姿。



同じ学校になってもほとんど顔を合わせていない芽衣。



それでもその姿を学校で見るたびに俺は心を痛めていた。



観里がいなくなって切れた俺たちの縁。



観里は相当でかいものを持って旅立って行った。



芽衣には友達もいないらしい。



もしかしたらいじめられてるかも…。



わざとぶつかられてるっぽい光景を見たこともある。



それでも全く気にしていなさそうだった芽衣は、やっぱり観里にすべてを持って行かれたんだと思う。



俺は思わず「芽衣」とその名前を呼んだ。



一瞬で「観里!?」と言って振り返った芽衣の表情は、必死なもので。



俺のこと…観里だと思ったんだな…。



でも、俺の姿を認めると、泣きそうな顔になった。



ごめん、ごめん芽衣…。



俺は心に沸き上がる罪悪感を封じ込める。