守ってやるよ

あたしを見て立ち尽くした千里は、あたしの涙であたしの元にしゃがみこんだ。



それからあたしのことを包み込む。



「ごめん、ごめん芽衣…」

「千里が守ってくれなかったら、誰があたしのそばにいてくれるの…?」

「ごめん…」



あたしの腕をそっとさする千里の顔は悲痛で。



あたしはますます悲しくなった。



「千里…あたし、千里が好きだよ。そばにいてほしいよ。今みたいな関係は…嫌だよ」

「芽衣…」

「千里は…あたしのこと、少しも好きじゃない? あたしのそばにいたいと思わない?」



涙の勢いに任せて言った言葉。



千里は何も言わずひたすらあたしの腕や背中をさすっている。



「千里…なんか言ってよ…」

「俺は…芽衣とそんな関係にはなれない…」

「どうして…? 観里がいるから…?」



あたしの言葉に、千里は小さくうなずいた。



「あたしも最初は葛藤があったよ。千里の気持ちは分かるつもり…。だけど、あたしにとって観里は大切な人のまま。そのままでも千里のことを愛したいと思ったの…」

「違う、違うんだよ、芽衣…」

「なにが…?」

「俺は、そんな資格ない。芽衣を想うなんてこと、あっちゃいけないんだよ…」



千里がすごく苦しそうにそう言った。



資格がない…?



あたしは千里が何を言っているのか分からない。



「どういうこと…?」



あたしは千里の目を見た。



千里はぐっと覚悟の目をして。



「俺のせいで…観里は死んだ。だから…だから俺は芽衣のことを思うなんて…できない」



そう言って千里は泣いた。



こらえていたものを吐き出すように。



千里の涙を呆然と見るあたし。



千里のせいで…観里が死んだ?



どういうこと…?



あたしは、千里の涙を黙って見ていることしかできなかった。