守ってやるよ

「どうしようもなく、怖くなるの…。観里がいた日から遠のいていく夜の闇とか、観里がいなくなった心の虚無感とか。そんなものがずっと心を支配している」

「…」

「観里があたしのすべてだった。それなのに夢にすら出てこない。夢でもいいから会いたいよ…」

「芽衣…」

「観里がいなくなるのが怖いよ…。でもそんな恐怖から守ってくれる観里はもういない。あたしは…どうしたらいいの?」



あたしはそう言って泣き続けた。



そして、千里は。



千里は、泣くしかできないあたしにこう言った。



「俺が、守ってやるよ」

「え?」



あたしは、突然の千里の言葉に、涙が一瞬止まる。



千里…?



「観里がお前を守れなくても、観里の代わりに俺が守ってやることはできる。俺が、お前を夜の恐怖や不安から守るから。だから、もう泣くな」



真剣な表情で、優しい声で。



そう言う千里に、あたしはまた涙があふれてきた。



「泣くなっつったろ…」



千里はそう言って、困った顔で、あたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。



それが、あたしたちの物語のはじまりだった。