守ってやるよ

~芽衣~

それから千里とは会うこともなく、夏休みに入った。



去年の夏休みと違って、あたしは今は少し前向き。



花乃ちゃんと遊んだり、一緒に夏休みの宿題をしたり。



去年と同様、お母さんと料理教室にも積極的に行ったりした。



そういえば、千里に料理作ってあげるって約束して、まだ1回もしてあげてないなあ…。



そんな感じじゃなくなっちゃったけど…。



そして、台風の日がやってきた。



あたしは千里からの連絡を少し期待したけど、その連絡も来なかった。



だけどあたしの方も、前ほど天気の悪い日に苦しくはなくて。



台風の日に連絡を待ってしまうのは、ただの千里への恋心だ…。



あたしたち、どうなっていくんだろう。



このまま何もなく卒業して、距離ができて、もう一生会わないんだろうか。



そう思うと苦しくて切なくて、やっぱりあたしは涙を流した。



そして夏休みは終わって行った。



だけど千里とは相変わらず。



あたしからも特に連絡はしないし。



学校で会っても目も合わせてくれない。



あの日、最後にあたしのことを抱きしめてくれたのは…なんだったんだろう。



きっと千里には千里の思いがあって。



あたしはそこに入っていけるほど強くない。



千里を苦しめてまで、千里の心には介入できない…。



結局あたしたちの距離は離れたまま、季節は流れる。



秋には修学旅行や体育祭があって。



あたしはちゃんと楽しむことができた。



隣には花乃ちゃんもいる。



一年前と比べて、あたしは本当に前向きになれたよ。



全部千里のおかげなのに…。



その千里とは、今も距離ができたまま。