守ってやるよ

「兄を亡くしたあたしだから言えることだけど…。死んだ人はもう戻らないんだよ。芽衣が前に進むしかないの。それが観里くんのためでもある。観里くんは、芽衣の新しい未来のための背中を押してくれる人ではない?」

「あたしの新しい未来の…」



観里の言葉がよみがえる。



“芽衣は芽衣の好きなようにしたらいいんだよ”



観里は…あたしの背中を押してくれる人だ…。



「それにね、千里くんへのその気持ちが芽衣の膿なら。このまま溜めていくだけなのは芽衣にとっても良くないよ」

「膿…」

「2人の関係もどんどん悪くなっていくし、あのときハッキリさせればよかったってあとから後悔にもなるよ。それでも気持ちを封じ込めるなら…あたしはもう何も言えないけど…」



花乃ちゃんの言葉はあたしに深く刺さった。



あたしはもう…前に進むしかないの…?



この気持ちを認めて、消化させるしか…。



家に帰っても一人でずっと悩んでいた。



観里としたこと、観里と話したことを思い出す。



一緒に勉強したり、海に行ったり、たくさん笑い合って、何よりも観里といる時間が好きだった。



“芽衣、おいで”

観里の腕の中が好きだった。



“芽衣は良い子だね~”

観里の優しい言葉が好きだった。



だけど、あたしの頭の中にはもう一人…。



泣いているあたしの頭をそっと撫でる優しい手、なんでも話を聞いてくれる優しい顔。



あたし…千里のことが好き…。



もう一度、観里の言葉を思い出す。



“芽衣は芽衣の好きなようにしたらいいんだよ”



観里…あたしの背中、押してくれる…?



覚悟を決めたあたしは立ち上がった。



そのまま、家を飛び出す。



向かうのは、千里の家。