守ってやるよ

「花乃ちゃん」

「ん?」



あたしの後ろの席で読書をしている花乃ちゃんに声をかけた。



花乃ちゃんに話を聞いてもらいたい…。



「ちょっと次の授業一緒にサボらない?」

「いいけど…どうしたの? いつも千里くんとサボるじゃん」

「そのことで…」



花乃ちゃんは何か察したみたいだった。



優しい笑顔で「いいよ」と言ってくれる花乃ちゃんに感謝…。



次の授業、2人で屋上に出た。



くもり空は、前ほどあたしの気を塞がないけど、やっぱり良い気はしない。



「花乃ちゃんさあ、前に…あたしが千里のことを好きなんじゃないかって言ったでしょ?」

「うん…軽率なこと言ってごめん」

「いや、いいのそれは…。だけどやっぱりあれから千里のことを変に意識するようになって…」

「…」



花乃ちゃんにこれまでのことを話した。



千里を避けようとしたこと、それでも千里から離れられなかったこと。



花火大会でもう逃げられないと悟ったこと。



「だけど、やっぱり観里のことを考えると手放しに好きだとは…後ろめたくて思えない」

「芽衣はさ…千里くんのこと、どのくらい大切に思ってるの?」

「え…?」

「それによっても話は変わってくると思うんだけど…」



千里のこと…。



千里は、どん底だったあたしを救ってくれた。守ってくれた。



いつでも優しくて…。



あたしのことを一番に考えてくれた。



千里は…あたしにはなくてはならない存在だ。



「観里くんとどっちが大切?」

「そんなの…比べられるわけないよ!」

「じゃあもうどうするかは分かるじゃん。はっきりと好きだと認めるしかないよ。それは観里くんを蔑ろにすることにはならない。観里くんのことも同じくらい大切なんでしょ?」

「そうだけど…」



花乃ちゃんは優しく笑ってあたしのことをそっと抱きしめた。