守ってやるよ

「千里! お待たせ!」



夏のはじまり、花火大会の日。



芽衣は浴衣でやってきた。



ひまわりの柄の浴衣は芽衣によく似合っていて、やっぱりどこか俺はときめいてしまう。



無理に考えないようにして、「行くか」と歩き出した。



花火大会は、会場に着くまでもすごい人の数。



時おり姿が見えなくなりかけるので、裾を引いて芽衣を隣に戻す。



「ここ持ってろよ」



そう言って芽衣の手を取って俺の服の裾を掴ませた。



「うん…」



遠慮がちに俺の服の裾を持ってうつむき気味に歩く芽衣。



俺たちの間に不思議な時間が流れた。



「人多いな」

「花火大会って来るの久しぶり。こんなに人いっぱいいたんだね」



なんてことない会話をしながらゆっくりと歩く。



人の波に乗りながら歩くと、会場となる広い土手に出た。



土手に出るとそこは開けていて、さっきの混雑とはうってかわって空いてるスペースもたくさんある。



それから屋台もいくつか出てて。



「なんか食うか?」

「うん!」

「何がいい?」

「うーん…たこ焼き」



芽衣にたこ焼きを買ってやったら喜んだ。



それから適当な場所を見つけて座る。



「千里も食べる?」

「じゃあ少し」



芽衣と一緒にたこ焼きをつついて食べる。



こんな時間も俺には幸せで…。