守ってやるよ

『明日は大雪らしいよ』

『へー! 積もるかな?』

『多分積もるんじゃない?』

『じゃあ雪遊びしよ! 雪だるま作ったり、雪合戦したり』

『いいけど、その前に芽衣の合格発表が先だね』



観里とした雪遊びの約束は果たされることはなかった。



そして、ちょうどその日はあたしの高校合格発表の日で。



観里と同じ高校に行きたくて一生懸命勉強した。



明日は早く起きて、合格発表を見てから観里と遊ぶんだって思ってた。



それなのに。



“芽衣、起きて!”

“どうしたの、お母さん”

“観里くんが――”



起きたその時、観里はもうこの世にはいなかった。



雪につられて散歩に出て、スリップした車に跳ねられたって…。



そこからあとのことはもうほとんど覚えていない。



あまりにも身に起きたことに現実味がなさすぎて…。



起きて観里のことを聞かされたあの朝から、あたしの時間は止まっている。



とにかくただひたすら、毎日を泣いて過ごしていた。



そんなことを思いだしたらまた涙があふれ出す。



「帰る頃には止むといいな…って…」



千里があたしのことを見て、ぎょっとした。



あたしはもう止まらない。



「千里…あたし…どうしよう…」



千里があたしの前でおろおろとしている。



あたしはそれでも泣き止まなくて。



「どうしたんだよ…」

「千里ぉ…」



千里にしがみつくようにあたしは泣き続けた。



観里にそっくりな千里のその声が、あたしに色んな感情をもたらす。



ずっとその声を聞いていたい、いや、これは観里のものじゃない。



観里…観里に会いたいよ…。