守ってやるよ

一通りお墓参りが終わって、あたしたちは観里の家に戻る。



ここからは、お(とき)と言って簡単な会食。



出された食事をあたしはご両親と観里の話をしながらつまんでいた。



観里の思い出話をするこの時間なんかもあたしは切なくて泣きそうだったけど。



以前はそれすらできなかったように思う。



1年でよくここまで成長したと思う…。



千里のおかげだよね…。



っていうか千里がさっきから見当たらない…。



あたしはご両親にお手洗いに行くと言って席を立った。



千里…どこ?



トイレにもいないし…。



2階に上がってみた。



何度も来たこの家。



観里の部屋も千里の部屋も2階にある。



奥から物音が聞こえた。



「千里…?」



音は観里の部屋からだった。



近づくにつれ、それは人の声だと分かった。



観里の部屋をそっと開ける。



そこには…号泣している千里の姿があった。



「千里…どうしたの、千里」



あたしは千里に駆け寄って背中をさする。



千里は涙が止まらないようだった。



千里がこんな姿になるなんて…。



今まで見たことがない。



あたしが泣いてるそばで支えてくれていたことがあっても、千里の涙なんて…。



「千里、大丈夫だよ」



そう言ってとにかく背中をさする。



「芽衣…俺、ダメかもしれない。俺はやっぱり、観里には…報えないのかも」

「なんのはなし…?」



千里は泣きながらよく分からないことを言う。



だけどとにかく目の前の千里が辛そうで、あたしは必死だった。



思わず千里のことを抱きしめる。



そのまま背中をさすると、千里ははっとしたように、動きを止めて、あたしを離した。



そして立ち上がる。



両手で顔を覆って、それから涙をぬぐって。



「ごめん、取り乱した。…忘れてくれ」



そう言って、あたしを置いて部屋から出て行った。



千里、どうしたの?



あたしには何がなんだか分からなくて。



だけど、千里には千里の大きな傷があるのかもしれない。



そう思った。