守ってやるよ

それから千里は、天気の悪い日には必ず電話をくれた。



そして、台風の日。



あたしは朝からその天気の悪さにいつもみたいに心が不安定になっていた。



ベッドにうずくまってなんとかその日をやり過ごそうとする。



家のインターホンが鳴る音がした。



お母さんが出る声がする。



「あらー、久しぶり。大きくなったね」



お母さんの大きい声。



それから、下からあたしを呼んだ。



「芽衣―、千里くんが来たわよ」



千里!?



あたしはびっくりして布団から抜け出た。



パジャマだけどまあいいや…。



下に降りると、玄関先に千里。



お母さんが「パジャマのままじゃない」と顔をしかめた。



でもあたしはそんなことどうでもいい。



「千里、どうして来たの…?」

「一緒に宿題でもやろうと思って。上がっていいか?」

「いいけど…」



その言葉に、遠慮なく上がる千里。



千里があたしの家に来るのはどれくらいぶりだろう…。



小学生のときは観里と3人でお互いの家でよく遊んだけど、中学生になってからはほとんど来てないんじゃないかな。



不思議な気持ちで千里を部屋に上げる。



「ほんとに、なんで来たの…?」

「お前が悲惨なことになってるんじゃないかと思って。当たりだったみたいだな」



あたしのこと心配して来てくれたのか…。



本当に心配ばっかりかけてるな…。



「大丈夫か?」

「うん…苦しいよ…。でも千里が来たから気は紛れたかも…」

「それなら良かった」



本当にその通りではあった。



千里がうちに来てから、さっきまでの重苦しい気持ちはどこかへ飛んで行った。



あたしは千里に救われてばかりだ。



それから夏休みの宿題を千里と広げて。



授業をさぼってばかりのあたしには分からないところが多すぎる。



千里が教えてくれた。



千里もあたしに誘われて一緒にサボってるのに何で分かるの…。