守ってやるよ

千里はしばらくなにも言わない。



だけど、一呼吸置いて、あたしに優しく言った。



≪芽衣は…観里のこと、心の底から好きなんだな。愛してたんだよ≫

「うん…」

≪俺は芽衣があの日のままでいて、あの日から離れていきたくないの、変じゃないと思うよ。それだけ深く観里のこと愛してたんだから。だけど、俺は芽衣をあの日のまま置き去りにもしたくない。観里もきっと望んでない≫

「千里…」

≪つらいかもしれないけど。俺と一緒に乗り越えることはできねえ? 俺に何ができるかわかんないけど…芽衣をあの日から抜け出させたい≫



千里はやっぱり優しい…。



あたしはあの日から抜け出る勇気はないけど…。



だけど不思議と、千里に託してみてもいいんじゃないかという気持ちになってきたよ…。



不思議だな…。



千里と観里は性格も正反対。



穏やかな観里と、荒っぽい千里。



それなのに、あたしは千里から、観里に近い救われ方をしている。



本当に、観里がそばにいるみたい…。



全然違うのにな…。



「ありがと…。ありがと、千里」

≪泣くなよ…。お前はいつもすぐ泣くのな≫

「だって…しょうがないじゃん…。涙にキリはないんだよ…」



また千里の前で泣いてしまう。



その優しさに、甘えてしまう。



その日、泣きつかれたのか、千里の言葉に癒されたのか。



あたしはすぐに眠ることができた。