守ってやるよ

千里は優しい。



なんでこんなに優しくしてくれるんだろう…。



千里も寂しいのかもしれない。



観里とめちゃくちゃ仲の良い兄弟っていうわけでもなかったけど、観里のことは兄として慕ってたと思う。



だから観里がいなくなってぽっかり穴が開いたような感じがするのはきっとそうだと思う。



その寂しさに、あたしと傷を舐め合うように優しくしてくれるのかな…。



でも千里の気持ちを慮るほどあたしも余裕がない。



千里を利用してるみたいで心苦しいけど、甘えちゃうよ…。



それから千里としばらく喋り続けて。



「そしたらぼーっとして火の中に料理酒こぼしてめっちゃ焦ったんだよ」

≪なんかそういうパフォーマンスみたいだな≫

「あはは、そうかもね」



時おり笑い混じりにしゃべる。



あたし、自然に笑えてる…。



観里が死んでから、あたしは上手く笑えなくて。



笑おうとするとその前に悲しい気持ちが襲ってくるの。



観里が死んで半年。



あたしも少しは前に進めてるのかな…。



そう思うと、それはそれで切なかった。



「千里…あたし訳の分からないこと今から言うんだけど聞いてもらっていい?」

≪いいよ≫

「観里が死んでからもう半年も経つのに全然あたしは慣れなくて、毎日悲しみの中にいるの。人によっては表面上でも明るくいられる人もいるでしょ。観里のご両親だって、今でもきっと悲しいけど表面上は明るくしている。あたし、それがどうしてもできないの。明るい気持ちになれることも少ない」

≪うん≫

「半年経って、まだあのときとほとんど同じ悲しみを抱えて生きていて、自分でも変だなと思う。でも悲しみを続けている自分にホッとしてもいるの。悲しみが薄れたらそれは観里が遠くなっていく感じがして」

≪…≫

「それにあたしにとって半年は短い。短いけど長い。観里がいた日から遠のいていくのが怖いの…。嫌なの。あの日がどんどん遠くなって、どんどん思い出になって、薄れていくのが…」



言いながら、あたしは泣いていた。



観里が遠のいていくのが怖いよ…。