守ってやるよ

「濡れちゃってどうしたの~?」

「…」

「拭いてあげよっか~?」



そう言って、あたしにモップを押し付けてきた。



あたしはさっきので生気を抜かれて抵抗できない。



さすがに…これは最悪だ…。



相川さんたちはあたしにしばらくモップを押し付けてから、笑いながらトイレを出て行った。



相川さんたちが出て行ったあと、あたしもトイレから出た。



あたしの姿に、周りにいた人たちがひそひそと噂をするのが分かる。



あたしはたまらずその場にうずくまった。



観里…。



観里、助けて…。



いじめが原因じゃない。



こんなときにも助けに来てくれない観里の存在に涙が止まらなくなった。



気づけば声を上げて泣いてて。



観里に会いたい。



観里にここに来てほしい。



抱きしめて欲しいよ…。



そのとき…。



「芽衣!?」



観里の声が…上から降ってきた。



違う、これは、千里の声。



顔を上げると、怒りと心配が混ざった顔であたしを見ている千里がいた…。



「芽衣、どうした!?」

「千里…」



あたしはその場でさらに号泣して。



観里はここにいない。



観里の代わりに、千里がいる…。



「あいつらにやられたのか!?」



あたしは小さくうなずいた。



「絶対許さねえ」



そう言って、千里があたしに目線を合わせてしゃがんだ。



それからハンカチであたしの顔や髪を拭いてくれる。



そして、あたしに「立てるか?」と優しく声をかけて、あたしをそっと立たせた。