守ってやるよ

「先生は? 知ってんのか?」

「うーん、前は気づいてなさそうだったけど最近はもしかしたら気づき始めてるかも」

「なんだよそれ…」



千里があたしの代わりにめちゃくちゃ怒ってくれてる。



あたしはあんまり感情が動かないから、あたしの代わりに怒ってくれるのはありがたいかも。



これもきっと、『守る』のうちに入るよね。



観里がいたら起こらなかった問題の数々を、千里が代わりに解決しようとしてくれる。



千里の存在、本当にありがたいと思ってるよ。



千里が代わりに怒ってくれるだけで、なんだか救われた気になる。



それだけで充分だと思うあたしは、やっぱりまだ感情に色が足りないんだと思うけど。



今はそれでいい。



そう思ってた。



それからもいじめは続き…。



「今度は教科書かよ…」

「うん、見るに耐えない無残な姿に…。逆に書き込みたくさんで勉強熱心と思われるかも」

「冗談言ってる場合かよ」



冗談でも言わなきゃやってられないよ。



いじめに傷ついてはないけど面倒ではあるからね…。



そして、事件が起こった。



お昼休み、トイレに入っていたときのこと。



何人かの笑い声がトイレに入ってきて、その中に相川さんのものも混じってるのが分かった。



めんどくさいなー…。



そう思った瞬間、トイレの個室の上から水が大量に降ってきた。



思わずあたしから声が上がった。



そして、「キャハハ!」と大声で笑う女子たちの声…。



嘘でしょ…。



あたしは呆然。



今までもひどかったけど、ここまであからさまなことされるとは…。



ずぶ濡れのまま、個室から出た。



個室の外には相川さんたちが腕を組んで待ってて。