【フランツ・リオンピアノリサイタル】
今日は、ウィーン国立音楽大学の先生でもあり、本宮先生の恩師でもある、世界的有名なピアニストフランツ・リオンピアノリサイタルINジャパンの日。開演は十八時。私と周ちゃんと瑛里は、アクトシティ大ホールへと向かった。
リオン先生が日本でコンサートを開催するのは五年ぶり。待ちに待ったリオンファン達が一気にチケットサイトにアクセスしたため、何度もサーバダウンし、プレミアチケットとなった。リオン先生の愛弟子である本宮先生は、チケットを四枚プレゼントされ、私と周ちゃんと瑛里をコンサートに誘ってくれた。
 
「周ちゃん、楽しみだね!いつか周ちゃんも、日本に凱旋コンサート。夢が膨らむね!」
「もお、真瑠璃ちゃん気が早い〜でもね、僕、リオン先生のコンサートで沢山学ばせてもらいたいと思ってきたよ!」
「すっ素晴らしい!」
「ねえ周司?周司は東京の音楽大学へ行くのは辞めたの?留学することにしたの?」
「正直なところ、まだ迷ってる。」
「そっか。周司が一緒に東京の大学へ行かないと、つまらないな〜。ねえ、ぶー?」
「本当だよね。って。だから、ぶーって呼ばないで!」
「そうだよ、瑛里ちゃん。真瑠璃ちゃん、もうすっかりスマートだよ。それに…僕は、真瑠璃ちゃんの外見はどうでもいいよ。真瑠璃ちゃんの性格が大好きだよ!」
「周ちゃん…。」
「は?何それ!周司、まさかの告白?めちゃくちゃ笑う!」
「そういう事じゃないよ!瑛里ちゃんは何でも見た目で人のこと言うから、そういうのって魅力的じゃないよ!」
「ふんだ!何よ、周司までぶーの味方!なんか、全然面白くなーい!ベーだ。」
「まあまあ、二人とも。なんか、ごめんね私の見た目でこんな事になって。」
「本当だよ!罰として、ジュース奢ってよね!ぶー!」
「えー⁉︎やだよ!」
「だから!瑛里ちゃんのそういうところが、僕は嫌なの!」
「はいはいはいはい。別に周司に嫌われたってへっちゃらだよ、ベーだ。」
瑛里が周ちゃんに思い切り舌を出してあっかんべーをしている。
いつもこうやって口論になる二人だけれど、とてもお似合いな気がするのは私だけかな。
「あらあら、三人で仲良く盛り上がっているのね。お待たせしちゃったわね。ちょっとラウンジでクールダウンしてから、ホールへ向かいましょうか。」
本宮先生!救世主‼︎
私は、本宮先生のような人になりたいな。いつも優しくてあたたかくて、それでとても上品。素敵だな。
 
 【ラウンジ】
「ケーキセットを四つくださいな。ホットコーヒーに、アイスティーを三つお願い致します。」
「かしこまりました。ケーキの見本をお持ちいたします。」
こんな素敵なラウンジは、初めて。いつもは、ホールの中で開演を待つか、ホールの外のソファーでジュースを飲んで待つか。ワクワクしちゃう。
「本宮先生!今日は、私たちを招待してくれてありがとうございました!」
「まあ、真瑠璃さん。喜んでいただけて嬉しいわ!」
「僕もです。それに、公開レッスンまで。」
「うんうん。リオン先生が、一人だけならって言うのでね。真瑠璃さんと瑛里さんには申し訳なかったわね。」
「いえ。私は、周ちゃんのレッスンをみているだけで凄い勉強になります!それに、私だったら緊張して、ちゃんとレッスン受けられる自信がないし。」
「私も!それに、そんな凄い人にレッスンしてもらっても勿体無いから!周司でよかったです!」
「僕は、みんなの分まで一生懸命レッスン受けさせていただきます!」
「はい!わたくしも楽しみにしているわね。楽しみましょうね!さあ、ケーキをいただきましょうか?」
「はーい!」
「はーい!」
「いただきまーす!」
目の前に運ばれてきた、宝石のようなケーキと紅茶。素敵なラウンジでのこのひと時は、まるで、周ちゃんの未来を予感させるようだった。