いつからもたれていたのか記憶にないけれど、意識のない人間はきっと重たかったはず。さぞかし邪魔だっただろうに、起きるまで耐えててくれて非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 うつむいていたから顔まではわからなかったが、同じ過ちを繰り返さないように気を引き締めなければならない。寮生のほうが多いので、バス通学の人間は結構絞られる。わたしは乗車後はすぐに寝るため、残念ながら顔はほとんど覚えていないけれど。

(今度は誰かに迷惑をかけないよう気をつけよう……!)

 決意を胸に正門をくぐる。先ほどの男子生徒の背中はすでに小さくなっており、だいぶ距離が引き離されていた。かと思えば、後ろから寮生がわらわらと集団でやってきて、バス通学の生徒は飲み込まれていった。

 ◇◇◇

「……あれ……?」

 翌日。揺れる車内で二度寝をしていたわたしは、既視感のある光景にさぁっと血の気が引く。あわてて身を起こすと、隣にいた男子生徒が身じろぎする。
 なんとことだ。またしても、人様の肩を借りて夢の世界に旅立ってしまったなんて。二度はすまいと心に誓ったのに。
 うつむきながら、心から謝罪する。