バス通学の園川さんと寮生の三牧くん

 わたしが己の失言を知ったときには退路は断たれており、あわてて自分の口元を押さえても時すでに遅し。一度口から出してしまった言葉はもう取り消せない。
 宣言通り、本気を出した三牧くんはすごかった。
 一日の始まりは三牧くんからのモーニングコール、学校に到着したら雑談をかわしながら勉強を教えてもらったり、最近の美味しいスイーツ特集記事を見せてもらったりして、帰宅後はスマホ越しに「おやすみ」と囁かれて終わっていく。控えめに言って供給過多である。

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 休日のデートプランもパーフェクトだった。
 午後に待ち合わせをして、本屋を巡ったり、ちょっとおしゃれなカフェで紅茶とシフォンケーキに舌鼓を打ったり。夢に描いたままのデートコースに、わたしは完全に浮かれていた。翌週は気になっていた映画を二人で観て、どこのシーンが印象的だったかを近くの公園で語り尽くす。三牧くんの解説は非常に為になるものばかりで、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。