バス通学の園川さんと寮生の三牧くん

 うっとりとつぶやき、ハッとした。つい心の声がもれてしまった。夢だなんて大げさな、と呆れられるかもしれない。そう思って視線を上げれば、三牧くんは笑みを深めた。
 いつもの天使のような笑顔だ。邪な心が浄化されそうなほど神々しい。けれど、不穏なオーラもうっすらと混じっている気配がする。気のせいだろうか。
 金縛りに遭ったように動けずにいると、彼の唇がわたしの耳元に近づく。
 いきなりの大接近に心臓が暴れ出す。緊張と興奮で息がうまく吸えない。このままでは過呼吸になるのではと不安が大きくなったところで、三牧くんが囁いた。

「大丈夫。他の男なんて見向きもしなくなるくらい、僕に夢中にさせるから。覚悟してね」

 吐息混じりの甘い声に、カクンと腰から力が抜けた。
 だが無様に地面に顔が激突することはなく、流れるように腰を抱かれて、わたしは声にならない悲鳴を発した。体を支えてもらったことはありがたい。けれど、救助の一環とはいえ、三牧くんの体に密着している状態はいかがなものか。