バス通学の園川さんと寮生の三牧くん

「……知ってるかもしれないけれど、僕は寮生なんだ。親が入院して弟妹の面倒を見るために一時的に実家に戻っていたんだけど、今日でバス通学も終わるから……」
「そうだったんだ。大変だったね」
「いや、長男としての責務を果たしただけだから。僕が家族の世話をするのはいつものことだから、それほど負担ではないよ」
「三牧くんは昔から面倒見がいいんだね」

 立派だなぁとつぶやくと、三牧くんは照れたように頬を人差し指でかく。それから薄く息を吐き出して、わたしに向き直る。

「話を戻すけど、前から君のことがずっと好きだった。園川さんと一緒に登校できて、本当に嬉しかった。何度バス通学万歳と思ったことか……。仲良くなるチャンスだと思ったんだけど、なかなか自分から声をかけられなくて、君の隣の席を死守することぐらいしかできなくて。無意識でも寄りかかってくれたときは天にも昇る心地だった」
「……そ、それほどまでに?」
「うん。役得だった。あのときほど神に感謝した瞬間はないだろうね」

 恍惚とした表情で言われ、わたしは呆気にとられた。
 今まで気づいていなかっただけで、三牧くんは感激家だったらしい。