三牧くんはこうやって徳を積んでいらっしゃるんだ。見習いたい。きっと来世でいいことがたくさんあるよ。

 ◇◇◇

 いつものように三牧くんにバスで起こしてもらい、教室までの道を並んで歩く。

「前から気になっていたんだけど。その髪って願掛けでもしてるの?」
「あ、えーと。なんとなく切る機会を失ってただけっていうか。でもさすがに鬱陶しいよね。思い切って短くしちゃおうかな。これから夏だし」

 改めて自分の髪を見下ろすと、腰あたりまで伸びている。
 ここまで長いと、周囲の目にもいい印象を与えないだろう。髪を乾かすのも時間がかかるし、一度ばっさりカットしてすっきりするのもいいかも。
 髪の毛先をもてあそびながら、いつ美容院に行こうかなと気楽に考える。

「……切っちゃうの?」
「え? うん。別に思い入れもないし。髪はまた伸ばせばいいし」
「それもそっか。いつもくくっているよね。三つ編みとかポニーテールとか。……僕、園川さんのふわふわの髪が好きだよ。風でなびく姿がまた男心をくすぐるというか」

 はにかみながら言われて、どきりとした。